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連載

6月17日(月)発売の週刊ヤングマガジンから漫画の連載をはじめることになりました。

タイトルは「契れないひと(ちぎれないひと)」です。俺は、たかたけし。



去年DAYS NEOという編集者と出会える漫画投稿サイトに、このブログの漫画をそのまま転載していたのだが、3月に担当したいと言ってくれた編集者の方がヤンマガで、そこから1年ぐらいネームを持って行っては直し、持って行っては直し、「ここからここまでは原稿に描いても雑誌にしたら見えないから描いちゃダメだよ」と漫画の描き方の最初のページに載ってるようなことを教えられたり、「今誰が喋っていて何をしているの?」とコマを移動するたび質問されるので紙芝居してる気持ちになったり、「アパートの玄関ドアの外側に内側のポストを付けているね」と指摘され頬を赤らめたりしながら、いつのまにかマジかよと思う雑誌に連載が決まっていた。




2年前にやっと漫画賞をもらったが、いろいろうまくいかなかった。人間不信になる編集者とも出会い、雑誌の最終ページでそいつの役職が下がっているのを確認してほくそ笑んだり、雑誌の最終ページのそいつの編集者コメントを読んで「生意気に海外旅行行ってんじゃねえよ。お前みたいなクズはその場で回転してろ。」とイライラしたり、雑誌の最終ページしか読まない荒れた生活をしていたのだが、もう40だということもあり、このまま最終ページに吠えながら死んでいく人生は辛すぎると思い直して、また一からやるぞと前からよくエッセイ漫画の方が向いてると周りから言われてたので、ブログに描きはじめ、その中に出てきた飛び込み営業のエピソードが結果的に、新しい編集の方との出会いになり、連載になったので、くよくよしてる命が足りないおじさんでよかったと思った。



酷い目に合わされた人を忘れないように、優しくしてくれた人のことも忘れないものだ。たぶん相手が忘れてることも連載が決まったと聞いてから思い出すことがある。ネットで大喜利やってた時代からブログを面白いと言ってくれた人、けつのあなカラーボーイやA4しんちゃんの同人誌に描いたほとんど誰も読んでない私の漫画を褒めてくれた人、文学フリマのブースにいたら透明人間を見てる目をされたと卑屈な冗談言ってたことを聞かれたのか、私だけのサインが欲しいとわざわざ言ってくれた人、1番年上なのに何も言わず奢ってくれる人、仕事とはいえおじさんの耳まで舐めてくれたおっぱいパブの人、転んだ時に無かった石、ガラスの破片、まだスタートラインに立っただけですが、人の優しさでギリギリ40年生きてこられた実感があるので、ありがとうございますねこれからもよろしくお願いいたしますねと、‘ね’が付いただけで心を感じなくなる感謝で言いたいと思います。もしかしたら、すぐ打ち切られて、来年にはコンビニでヤンマガの最終ページに射精して逮捕されてるかもしれませんが、できるだけ楽しく続けられたらと思います。


連載は続けて読むほうが楽しいと思うのでしばらく読んでもらえると嬉しいです。

よろしくお願いいたしますね。





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【漫画】玄関

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【漫画】ペット

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【漫画】緑のおばあさん

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仕事のバス

夜勤をしてるコンビニへはバスで行っている。交通費は出ないが、起きてすぐたくさん歩きたくないからだ。アルバイトするためにしかそこに行かないので流れる景色でしかその街を知らない。いつも行列してるラーメン屋、知る人ぞ知るみたいな定食屋、音が無くてもうるさそうな居酒屋をテレビの車窓から見てる遠い感覚で見ている。帰りは歩いて帰ることもあるのだが早朝なので祭りのあとをただ通ってるだけで、明日の祭りのために置きっぱなしになってる屋台のように電気が消えても笑ってるファミレス前のマスコット人形を見て、退勤後笑顔から岩本虎眼の顔で歩いて帰る自分はまだマシだなと思えた。


出勤すると臭いおじさんが夕勤に入っていた。おじさんは臭いだけでなく仕事ができなさすぎて全時間帯で押し付けあいが発生していて、朝ポストを開けたら入ってたみたいに知らないうちに自分のシフトに入ってたりするので、今日はもう一人の夕勤の高校生が“仕事になんないっすよ”とBEE-HIVEに電話で抗議していた。

シフトを交代し、レジをうってると退勤して臭いユニフォームから臭い薄手のセーターに着替えたおじさんがレジに現れた。“フライドチキンを9枚お願いします..。”フライヤーで揚げて運んでる途中でトレイをひっくり返したらしい。そういえば“なんでこんなにヌルヌルなの?”ともう一人の夜勤の嫌な人にモップで床を拭かされていた。“転んだんですか?”とたずねると“手首が返って..”と単純にフライドチキン9枚に手首が関節決められただけだった。


数日後夜勤で出勤するとポストに臭いおじさんが入っていた。今日は夜勤か..。と退勤まで背中の阿斗を守りながら戦わないといけないのでいつもより気合いを入れてはじめたが、焦るとすぐパニックになる上に滑舌が悪すぎて何言ってるかわからない臭いおじさんは“(グローの本体)あるのないのどっち!?”“(フランクフルトをトングじゃなくて)手で持つなよ!”と、気づくと矢が刺さっていた。


退勤後廃棄の焼き鮭弁当を食べてると隣でおじさんも弁当を食べはじめた。しょうが焼き弁当を食べている。おじさんはおじさんと言ってるがもうすぐ60なのでおじいさんの方が近いかもしれない。本人には言わないがおじさんの臭みをおかずに弁当を食べるのはなかなか辛い。

“わたしってそんなに臭いますか..?”

おじさんが話しかけてきた。昼勤のおばさんたちには直接“臭いやばいまちがいない”と言われてるので自分でも臭いことはわかってるがそれがどんな臭いかわからないようだ。“例えばどんな臭い?加齢臭ですか?”と聞かれたが正直言ってこのおじさんでしか感じたことない初体験の臭さだ。まだ1番近いのはなんだ?なんだ?と頭をフル回転させて“○○さんでしか嗅いだことない臭いなんですけど、まだ1番近いのが橋の下にいる浮浪者ですかね”と答えたら、今まで気を使って本人に臭いと言わなかった努力の意味がわからないぐらい凹ませてしまった。“そうですか...”としょうが焼きを食べてると思えない顔になったので、“まあオンリーワンですし..”と笑ってもらおうとしたが渇いた笑顔をされた。なんとか話題を変えようと“最近漫画で賞をとったんです”と家族にも言ってない数人の友達しか知らないことをなぜかこんなに喋るのがはじめての臭いおじさんに言ってしまった。もちろん漫画を描いてたことも知らないので、“おめでとうございます”と空気が変わって結果的によかった。“奧さん綺麗みたいですね”とおじさんに言うと嬉しそうにスマホで奧さんの写真を見せてくれた。おじさんは30歳ぐらい年下のフィリピン人女性が奧さんなのは昼のおばさんが流すパブで日本国籍がほにゃららなゲーセワニュースで知ってたので聞いてみた。確かに美人だ。素直にうらやましい。許されるなら俺も8歳の美人と結婚したい。いいですねと近いうち結婚式をあげる話などを聞いてると、“今の奧さんに出会うまで7回お見合いしたんです”と全部2回目誰も会ってくれなかった話に臭いからだろと言うのを耐えてると“こんなことはじめて話します(照)”と言われ、急にゾッとして弁当を掻きこみ逃げるように身支度をはじめた。

休みの日はじめて仕事へ行くためのバスに乗ってみた。流れる景色でしか知らなかった定食屋は普通の味がする定食屋に変わったが景色は変わった気がした。
プロフィール

たか たけし

Author:たか たけし


ビッグコミックスペリオール「住みにごり」連載中



週刊ヤングマガジン「契れないひと」連載 全3巻



たかたけしの店 https://suzuri.jp/takatakeshi



お仕事などの連絡先 takatakeshi300@gmail.com

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